発達障害通級指導教室で指導する3つの分野
こんばんは、ちどりです。
私は発達障害通級指導教室の担当をしています。
通級指導教室、通級による指導は子どもの自立を目指し、障害による困難を改善・克服するために一人一人の状況に応じた指導を行うものです。
具体的な指導内容については、学習指導要領における「自立活動」の領域に沿ったものとなります。
「自立活動」は、個々の生徒が自立を目指し、生涯に基づく種々の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識、技能、態度及び習慣を養い、持って心身の調和的発達の基盤を培うことを目標としています。
特別支援教育にゆかりのない方は、あまり聞き慣れない言葉かもしれませんね。
たまに通級指導教室を「学習の遅れに対する補充をする場」と誤解されている方もいますが、そうではありません。
もちろん、特に必要があるときは、障害の状態に応じて各教科の内容を取り扱いながら行うことも可能ですが、あくまで障害による学習上又は生活上の困難を改善し、又は克服することを目的として行う必要があります。
(過去、通級指導教室について「各教科の内容を補充するための指導ができる」と記載されている時期もありましたが、各教科の補充…つまりは学習の遅れの補充と読み取られてしまい、本来の目的を逸してしまうことから、そのような記載から変更されました。)
ただ、利用する方に「自立活動」の説明をしても、なかなかうまく伝わりません。
そこで私は、発達障害通級指導教室で行う指導について、認知を「広げる」「鍛える」、認知に「合わせる」という3つの分野で整理して説明しています。
以下、詳しくまとめていきますので、参考になれば幸いです。
前提のお話、「認知」とは?
まず3つの分野の前提の「認知」のお話。
「認知」については様々な分野で様々な説明がされています。
私は「物事に対する考え方や捉え方」という意味で使用しています。
通級指導教室はこの「認知」について、様々な働き掛けをしていく場所と考えています。
認知を「広げる」
はじめに認知を「広げる」分野についてお話しします。
先ほど認知について簡単に説明をしましたが、それを「広げる」というのは、今の自分の考え方や捉え方だけでなく、もっと様々な考え方や捉え方を知り、自分に取り入れるというようなこと指します。
よくある例えでありますが、水が半分入ったコップを見て「水が半分しか入っていない」と捉えるか、「半分も入っている」と捉えるか、はたまた「喉が渇いた」と捉えるのかは人により違います。
もちろん極端すぎなければ違うこと自体には良悪はないのですが、あまりにも一般的な感覚からずれると本人がつらく感じることもあります。
もっと具体的に言うと、以下のようなことが考えられます。
- 自己理解を深めて、自分の認知について考える
- ストレスマネジメントの学習を通じて、不安との付き合い方を考える
- アンガーマネジメントの学習を通じて、感情コントロールについて考える
- ソーシャルスキルトレーニングを通じて、具体的なスキルを獲得する
心理療法的なことで言うと、認知行動療法を参考にしながら、子どもを否定するのではなく、自己理解を深めつつ、さらに多様な考えができるように支援していくことがポイントになります。
自閉症スペクトラム、ADHD、不安症傾向の子どもにはこの内容を厚くします。
認知に「合わせる」
次に認知に「合わせる」分野です。
ここは本人のもつ考え方た捉え方…言い換えれば特性に合わせた方法について取り扱います。
主な対象はLD…学習障害傾向の子どもです。
LDと一口に言っても読み障害、書き障害、算数障害など様々なパターンがあります。
それに合わせた、得意を生かした学習方法について指導する分野ですね。
先ほどと同じように、より具体的にすると、以下のようなことが考えられます。
- 読みが苦手な子どもに対してリーディングトラッカー(読む場所を焦点化するための補助具)を紹介し、定規などで代用する方法を指導する
- ワーキングメモリが低い子に対し、自分なりの覚え方について考える
- 継次処理、同時処理について知らせ、自分の得意な方式について考える
この分野では、本人の特性について担当者が理解していることが大切となります。
子どもがWISC-Ⅳを始めとした知能検査やK-ABCⅡのような発達検査を既に受けているなら、その結果をもとに何を指導するかについて十分に検討することが大切です。
認知を「鍛える」
最後は認知を「鍛える」分野となります。
今まで認知を「広げる」こと、認知に「合わせる」ことを紹介しましたが、そもそもこの認知の機能自体が十分に育ってない場合は土台がしっかりしていない家のように、いくら指導をしても改善は見られないように感じます。
よって、考え方や捉え方の基礎となる力を高める必要があるのです。
私は宮口幸治氏考案の「コグトレ®(Cog-Tr)」のうち「COGET」を取り入れて指導をしています。
「COGET」は、学習の基となる機能として「覚える」「数える」「写す」「見つける」「想像する」という5つの力を認知機能とし、それを鍛える認知機能強化トレーニングです。
コグトレについては、現在は学会もありますのでよければご覧ください。 発達障害通級指導教室における指導のヒントが山盛りです。
まとめ
「広げる」「合わせる」「鍛える」という三つの視点はいかがでしたか?
通級指導教室の指導は一人一人に対してオーダーメイドの指導です。
どうすればいいのか分からなくなってしまいがちではありますが、こと発達障害通級指導教室においては、上記の3つの分野を意識しておけば本筋からは逸れないと思います。
本ブログでは、上記の3つの分野に整理した形で教材についても紹介していきます。
少しずつになると思いますが、楽しみにしていただけたらうれしいです。
最後に
本記事は文部科学省が発行した「初めて通級による指導を担当する教師のためのガイド」を参考にしながら、ちどりの私的な考えをまとめたものです。
ちどりの教育観のアップデートと共に、記事の内容も適宜アップデートしていきます。
その記録を以下に載せておきますので、ご確認ください。
2022.2.26 初回執筆